筆者は『emaxis slim 米国株式(s&p500)』ホルダー
2023年9月時点では、筆者の資産の6割は『emaxis slim 米国株式(s&p500)』である。
なかなかの割合である。
インデックス投資家がやることは、「信じて持ち続けること」である。
『emaxis slim 米国株式(s&p500)』を持つインデックス投資家にとって、「アメリカ企業の利益構造を信じられるか」ということが、この商品を「信じて持ち続けること」につながると考えている。
以下では、「アメリカ企業の利益構造」を担う「ドルの価値」をアメリカが手段を選ばずに守り続けてきた歴史を振り返り、それが今後も続くのかということを考えていきたい。
「ドルの価値」をアメリカが手段を選ばず守り続けられるのか?
かつての米ドルの価値は金との「固定相場制」だった
ブレトンウッズ体制は、第二次世界大戦後の1944年から1971年まで続いた国際通貨制度です。この体制は、アメリカのブレトン・ウッズで開かれた連合国会議で成立したブレトン・ウッズ協定に基づいています。ブレトンウッズ体制は、金とドルの交換比率を固定化することで、通貨の交換比率を一定に保ち、世界経済を安定化することを目的としていました。具体的には、金1オンスを35米ドルと交換できることを定め、さらに各国通貨と米ドルの交換比率を一定に保つ固定相場制の仕組みを決めました。ブレトンウッズ体制は、戦後の西側諸国の経済の復興を支えました。しかし、1971年8月15日にアメリカが「金ドル交換停止」を宣言したことにより、事実上崩壊しました。
出典:googleの検索AI
かつて、ドルは35ドルで1オンスの金と交換できることを根拠に存在していた。
35ドルあればいつでも1オンスの金と交換できるから、ドルはアメリカ政府が作ったただの紙切れではなく、金との交換価値があるので、ドルで商品を購入できた。
金の価値以上にドルを刷れないと困るから「ブレトンウッズ体制」はやめた
ブレトンウッズ体制は、1971年8月にニクソン大統領がドルと金の交換を禁止したことにより崩壊しました。ブレトンウッズ体制は、第二次世界大戦後の世界経済の安定のために、ドルを基準とした固定相場制を採用した制度です。しかし、アメリカの経済がベトナム戦争で打撃を受け、日本やフランスなどの国が復興し始めたため、ドルを基準とした通貨体制を維持できなくなりました。また、世界中の貿易取引額が増大し、西側陣営各国のインフレが進んだことも、ブレトンウッズ体制の限界となりました。ニクソン大統領がドルと金の交換を禁止したことにより、ドルの価値が急落し、ブレトンウッズ体制は崩壊しました。この結果、各国の通貨価値は、アンカーなく変動相場制を漂うことになったのです。
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金と交換できるからドルに価値があったのに、ドルと金の交換を禁止してしまっては、「ドルに価値がある根拠」がなくなってしまう。
これによってアメリカ国内にある、「ドルと交換された金」は守れたものの、ドルは価値の根拠を失った。
当然、そんな通貨を信用することはできないので、その価格は暴落する。
無限にドルが刷れるようになったら「新しい価値の根拠」がいる
ドルと金の交換を禁止したので、これでいくらでもドルを刷ることができるようになったアメリカだが、ドルを作ってもそれを欲しがる人がいなければ作っても無駄である。
金と交換できないし、アメリカは自分で使えるお金がなくなったからって自分勝手なことをするしで、ドルとその発行元の政府を信じられる根拠は無くなった。
なので、ドルの価値を上げて、また世界中で使えるようにするには、「ドルに新たな価値の根拠」を付与する必要があった。
「石油と交換できるドル」という新しい価値を作る
ペトロダラー体制とは、石油輸出国が原油を輸出して得た外貨(ドル)を、石油の取引にのみ使用することを指します。原油の取引は通常ドルで行われることから、この名称が生まれました。ペトロダラー体制は、1974年10月に当時の国務長官であったキッシンジャーがサウジアラビアを訪問した際に、サウジアラビアとの間で「王家の保護を約束する見返りに原油輸出をすべてドル建てにする」という取り決めを行ったことに始まります。ペトロダラーは、石油を意味する「ペトロリアム」と、アメリカ合衆国ドルを意味する「ダラー」を合成した言葉です。日本では「オイルマネー」と呼ばれています。ペトロダラー体制は、第二次世界大戦後にアメリカが構築したものです。ドルが基軸通貨として選択された理由は、交換手段としての機能が他の国際通貨よりも優れているからです。
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そこでアメリカが考えたのは「石油と交換できるドル」にすることである。
石油はエネルギーとして、世界中の国々が必要としている。それを買うときに「ドルじゃなきゃ買えない」という状態にしておけば、世界中の国は自国の通貨や貴金属を一旦ドルに替えてから石油を購入することになる。
これで世界中でドルが必要とされる構造が出来上がる。やったね!アメリカ。
この構想を実現するために、アメリカは産油国と手を組む必要があった。アメリカだけが世界の石油需要を満たしているわけではないので、当たり前のことである。
そこで手始めに産油国であるサウジアラビアに武力を提供する代わりに、「石油の取引はドルだけでできる」ルールを作った。
これにより他の産油諸国も、サウジアラビアに「地域で一強の武力」を持たれても困るし、どのみち石油の売り先は必要だし、「オイルマネーリサイクリング」によって得られる利益もあるし、でこれに続くことになる。
石油の代わりにドルを受け取った国はその多くをアメリカに投資する「オイルマネーリサイクリング」
「オイルマネーリサイクリング(Oil Money Recycling)」とは、石油輸出国(主に石油を産出する国々)が、石油収入を再投資し、他の国々に対して資金を供給するプロセスを指す用語です。これは通常、以下のような形態で行われます:
石油輸出国(例:石油産出国)が国際市場で石油を販売し、大きな収益を得る。
これらの収益を、国内のインフラ、産業、経済開発、社会プログラムなどへの投資として利用する。
同時に、他の国々への資金供給も行う。これは、他国への直接の援助、債権、投資、または国際金融機関を通じた資金供給などの形で行われることがあります。
オイルマネーリサイクリングの主な目的は、石油輸出国が石油収入を有効に活用し、国内経済の発展を促進することです。また、国際的な影響力を拡大し、地域や国際的な安定に貢献することもあります。このプロセスは、一部の石油輸出国が豊富な資金を持つことで、国際政治と経済において重要な役割を果たすことがあることを示しています。
出典:chatGPT
アメリカに石油を売ってドルを手に入れて、それでアメリカをはじめとしたドルが使える国で資産を買う、その資産から得られる利益が産油国に入るので国が潤う。これを繰り返して豊かになるのが「オイルマネーリサイクリング」。
これが続けばドルの価値は保全される。
「石油と交換できるドル」という価値を脅かすヤツは潰す
「石油と交換できるドル」という価値を崩壊させるには、石油をドル以外でも買えるようにしてやればいい。
こうすればドル以外の通貨にも価値が生まれてくる。
しかし、そうなってはアメリカはもう「お金が必要になったらドルを刷る」ということができなくなる。こうなってはブレトンウッズ体制崩壊の時と同じ状況である。
なので、「自分が好きに発行して使えるお金を守るため」にもドル以外で石油を売るヤツは潰さなければならない。
以下は石油をドル以外の通貨で売ろうとして潰された国々である。
1. イラク:
イラクは2000年に石油取引をユーロ(欧州通貨)で行おうとした試みを行いました。しかし、アメリカの圧力とイラクへの経済制裁に直面し、この試みは成功しなかった。さらに、2003年にアメリカ主導のイラク侵攻が行われ、その後も政治的な不安定さとアメリカの関与が続いた。2. リビア:
リビアは、2011年に政府に対する反乱が勃発し、アメリカを含む国際的な連合軍による軍事介入が行われました。この紛争の背後にはリビアの石油資産へのアクセスやコントロールが関与しており、石油取引におけるアメリカの圧力も一因とされています。3. ベネズエラ:
ベネズエラはアメリカとの対立が続いており、アメリカはベネズエラに対する経済制裁を実施しています。これはベネズエラの石油産業へのアクセスに影響を与え、ベネズエラの石油取引に圧力をかけています。特にニコラス・マドゥロ政権への対抗勢力としてワン・グアイドが支持される中で、石油取引が争点となっています。これらの国々は、石油取引においてアメリカドル以外の通貨を採用しようとする試みを行ったり、アメリカとの対立が続いたりして、アメリカからさまざまな圧力を受けています。
出典:chatGPT
『BRICsプラス』の台頭でドルの価値は変わるのか
「イラク」、「リビア」、「ベネズエラ」以外にも、石油をドル以外で取引しようとしている国はある。
1. 中国:
中国は石油取引において中国元(人民元)を使用する試みを進めており、人民元建ての石油取引所を設立しています。これは中国の国際的な経済影響力の増大と関連しています。2. イラン:
イランはアメリカの経済制裁に対抗するため、ドル以外の通貨で石油取引を模索しており、ユーロや他の通貨での取引を検討しています。3. ロシア:
ロシアはロシアルーブル建ての石油取引を推進しようとしており、特にウラル山脈産の原油に関連しています。4. ベネズエラ:
ベネズエラはアメリカとの対立からドル以外の通貨で石油取引を模索しており、ユーロや他の通貨での取引を試みています。5. トルコ:
トルコはドルに依存せず、トルコリラを使用した石油取引を検討し、国内通貨の価値を支持しようとしています。6. ベラルーシ:
ベラルーシはロシアとの関係から、ロシアルーブルでの石油取引を検討し、ベラルーシルーブルを国際通貨として使用しようとしています。7. インド:
インドは国内通貨であるインドルピーを石油取引に使用することを模索しており、石油供給国との協力によりこの方向性を検討しています。8. カタール:
カタールはカタールリヤルでの石油取引を模索し、国内通貨を国際的な石油取引に活用しようとしています。これらの国々は、アメリカドルの支配力に挑戦しようとし、国際的な石油取引において異なる通貨を採用しようとしていますが、成功するかどうかは多くの要因に依存します。
出典:chatGPT
そしてそれらの国の多くが、今、『BRICsプラス』として協力関係を結んでいる。
この中で「中国」、「ロシア」、「インド」は核兵器を持っているので、これまで暴力で黙らせてきた国とはレベルが違う。
これらの国がドル以外で石油を取引できるようにして、その通貨が世界に浸透した時、ドルの価値、そしてアメリカ経済はどうなるのか?
『emaxis slim 米国株式(s&p500)』ホルダーの方はどう考えるだろうか?
こうしてドルに注目して世界を眺めると、アメリカ企業の株価だけを見て「アメリカ1強は今後も続く!」とはとても言えないだろう。
なので『emaxis slim 米国株式(s&p500)』を今後も持ち続けるためには、この事実も踏まえて自分の考えを持たなければならない。
でなければ、何かドルに不都合があればすぐに手放してしまうだろう。
『emaxis slim 米国株式(s&p500)』ホルダーの皆様はどう考えるだろうか?その考えをコメント欄で教えていただければ幸いである。
参考

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