業界経験者の「有料面接指導」は悪質な不安商売だと思う話

筆者の周りで「業界経験者」が「有料面接指導」で小遣い稼ぎをする人が増えてきた

 筆者の周りで「業界経験者」が「有料面接指導」で小遣い稼ぎをする人が増えてきた。

 「有料面接指導」をやっている人はさまざまで、現役でその業界にいる人もいれば、引退してから10年以上立っている人もいる。こうしてみると「業界経験者」って玉石混交だと思う。確かに経験者ではあるからね。

 当然といえば当然だが、「有料面接指導」は人気の業界への就職希望者に向けて行われているものが多い。

 特に「航空業界」、「ゲーム業界」、「人気業界の外資系企業」への就職希望者に向けたサービスが多いように感じた。筆者も(いまのところ)人気のある職業であるプログラマをやってたが、この業種でも「有料面接指導」はたくさん目にする。

 こうしてビジネスとして栄えている「有料面接指導」業界だが、これには違和感がある。

 この違和感の正体は、「有料面接指導」の本質は「不安を解消するに過ぎないビジネス」なので、就職希望者の「就職したい」という根本の問題を解決するものではないからだと考えている。

結論:業界経験者の「有料面接指導」は悪質な不安商売だと思う

 根拠はざっくり以下の通り。

  1. 採用活動とは企業がその時に欲しい人材を応募者の中から選ぶ行為なので、採用されるかどうかは、「その時の企業の需要」と「その時の採用市場の人材の質」によるところが大きいから。
  2. 業界経験者の「有料面接指導」のサービス提供側にはなんのリスクもなく、無限に評判をあげることができるから悪質な業者が淘汰されにくい。もし受講者が不採用なら「企業の需要と供給」などを根拠に「運が悪かった」で片付けられるし、採用なら「面接指導の効果だ」とPR素材にできる。
  3. 本当に採用されるのに必要なモノを提供しないから。採用されるには「今企業が欲している能力」や「今の企業カルチャーに合う人柄」であり、「面接のテクニック」ではない。

根拠1:採用されるかどうかは「需要と供給」次第だから少なくとも有料での「面接指導」は不要

 企業が採用をして労働者を確保する背景には、「それが必要だから」ということがある。

 無意味に人を採用する企業は基本的にはない。やってもらいたい業務があって、そのために人が必要だから採用するのである。

 なので採用する人数や欲しい能力は、「その時にその企業が欲しいモノ」になる。

 さらに需要があったとして、そこにどれだけの供給があるかも「採用される難易度」に影響される。

 極端な話、採用基準の能力があっても、採用枠が1人だった場合、そこに同じように採用基準に達している応募者が100人いたら、「採用される難易度」は格段に上がるだろう。そしてこうなればもはや、どんなに頑張って「有料面接指導」を受けても採用はされないだろう。

 しかも、高倍率をくぐって採用されること自体には別に意味はない。それで給料が上がるわけでもないし。

 つまり、求職者自身ができることは「採用基準の能力を身につけておくこと」くらいで、あとは企業の需要と労働市場の供給次第である。

 確かに「どうしても採用されたい!」という気持ちもわかるが、こればかりは運である。なので「有料面接指導」を受けるような無駄な足掻きはせずに、むしろ「チャレンジ回数を増やす努力」をした方がよほど建設的であると思う。

 実際、筆者は相当無能なエンジニアだったが、運良く、たまたま企業のポストが空いていただけで念願の仕事に就けた経験がある。

根拠2:「有料面接指導」は実績だけをアピールできるから誰でも「凄腕」を語れる

 上記の通り、「有料面接指導」を実施している業者は玉石混交である。

 それ自体はある程度時間をかければ、嘘をつかれない限りは、使えるかどうかを見切ることができるだろう。

 しかし、問題なのは「有料面接指導」の業者は、好調な実績のみを積みやすいことである。

 なので、「使えなさそうだけど、実績はなんかすごい」という「わかりにくいハズレ」を引いてしまう可能性が高いのである。

 業者側からすれば、受講者が合格すれば自分の手柄にすればいいし、不合格なら「タイミングや運が悪かった」とすればいいだけの話である。

 なので、成功と失敗は運なので、業者はとにかく試行回数を稼いで成功の数を稼ぎ、それをPR材料にしてさらに試行回数を稼いで、、を繰り返し、気づけば「ゲーム業界に1000人転職させました!」(5,000人は落ちてるけども!)なんて実績を作ることができる。こうなれば評判(笑)が評判を生むスパイラルができる。

 こうなるとまともな業者がいたとしても、それを探すのは本当に難しくなる。

 まぁこういう手法は「有料面接指導」業者に限った話ではないが。。

根拠3:採用されるのに本当に必要なのは「面接のテクニック」ではないから

 本当に採用に必要なのは、「今企業が欲している能力」や「今の企業カルチャーに合う人柄」であり、「面接のテクニック」ではない。

 これはなんとなくわかると思う。

 そして「業界経験者」程度が「今企業が欲している能力」や「今の企業カルチャーに合う人柄」を熟知しているとは限らない。その企業の現役の人事担当者や募集セクションのPMであればその辺りの事情をわかっていると思うが、「業界経験者」程度ではそういう内部情報についてはわかるはずもない。

但し1:面接の準備と練習は必要

 「有料面接指導」はやる必要はないが、面接の準備と練習は必要だと思う。

 少なくとも、面接の作法や面接で伝えたいことを伝える練習は必須である。

 しかし、これら必須事項を練習するだけであれば、ハロワ等で無料でも受けることができるので、無料でやるといいと思う。

 さらにそういう場所に行かなくても、『ChatGPT』などのAIとやりとりして練習するのもありだと思う。便利な時代になったもんだ。

https://chat.openai.com/

但し2:適切な指導は価値がある

 「有料面接指導」に付けられた価格分のお金を払う価値があるかは別にして、「適切な指導」にはある程度の価値はあると思う。

 自分で反省できない、AIを使っても文字を読んで理解できないとかの問題がある人は、直接対面で会話しながら教えてもらった方が或いは学習が捗るかもしれない。

但し3:もし求職者が横並びになれば「有料面接指導」で身につけた「飛び道具」が役に立つかもしれない

 もし求職者の能力がほぼ同じ、かつ、人柄についても誰を採っても大体同じだという時には、もしかしたら「有料面接指導」で教えてもらえるかもしれない「飛び道具」的なアプローチも効果があるかもしれない。

 が、ここに金を払う価値があるかはよくわからない。。

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